
「ダサい資料」を競う大会が開かれています
学生向けの就職活動支援サービスを手掛けるサポーターズ(東京都渋谷区)が、あえて「ダサいスライド資料」を募る大会を開催しています。ITmedia NEWSの記事(https://www.itmedia.co.jp/news/article/2608/28/2000000902/ )によれば、これは同社が10月10日から11日にかけて開く学生向けテックカンファレンス「技育祭2026【秋】」に合わせた企画で、優勝者にはYouTuberの「ラムダ技術部」さんと一緒にイベントに登壇できる権利と表彰状が贈られるとのことです。
企画はラムダ技術部さんがYouTubeに投稿した動画をもとにしたもので、参加者は3種類のテンプレート素材から1つを選んで編集し、技育祭2026【秋】を紹介する「ダサい資料」を作って提出します。エントリーとスライドの提出期限は9月11日まで、審査を経て9月16日に受賞者が決まる予定です。記事では、応募フォームそのものもあえてダサく作られている点が紹介されています。
一見すると単なる笑いを狙った企画ですが、ビジネスの現場から見ると意外に示唆に富んでいます。資料づくりという、多くの企業で毎日発生している作業をあらためて見直すきっかけになるからです。
「クソパワポ」はなぜ生まれるのか
そもそも何を指す言葉か
出典記事では、PowerPointなどで作られたスライドのうち、無駄にカラフルだったり演出が過剰だったりするものが「クソパワポ」「ダサ資料」などと呼ばれていると説明されています。PowerPointは、プレゼンテーション用のスライドを作るためのソフトです。SNSでは、こうした資料が仕事の不得手や「IT音痴」の象徴のように語られることがあります。
揶揄だけでは終わらない側面
ただし記事は、別の見方も紹介しています。スライド作成の技術が広く浸透していなかった時代や、パソコンに慣れていなかったころを思い出させる、どこか懐かしいものとして受け取られることもある、という指摘です。つまり「ダサい資料」は、単に個人の能力の問題ではなく、ツールや文化がまだ整っていなかった時期の産物という見方もできるわけです。
この視点は、社内で資料の質を話題にするときに役立ちます。誰かの資料を笑うのではなく、「当時はそういう作り方が普通だった」「今はこういう選択肢がある」という時間軸の話に置き換えると、指摘が人格批判になりにくくなります。資料の見直しは、担当者を責めずに進められるかどうかで成否が分かれる場面が少なくありません。
主催者の意図は「アウトプット力」の育成
逆説的なテーマを選んだ理由
サポーターズは企画の意図について、技育祭2026【秋】では技術力の向上だけでなく、自らの考えを他者に伝えるアウトプット力や表現力の向上も重視していると説明しています。そのうえで、あえて「いかにスライドをダサくできるか」という逆説的なテーマに挑むことで、型破りな発想力、技術への偏愛、ユーモアを表現する新たな場にしたいとしています。
「わざと崩す」ことで見える基準
わざとダサくするには、何がダサさを生むのかを理解している必要があります。色の使い過ぎ、意味のない装飾、読み手を置いていく情報量など、崩すべきポイントが分かっていなければ、狙って崩すことはできません。裏返せば、この大会は参加者に「良い資料の条件」を考えさせる仕掛けになっているとも読めます。
また、こうした企画には人を集める力があります。真面目な資料作成講座よりも、笑える大会のほうが参加のハードルは低く、話題にもなりやすい。学生に向けた採用広報の文脈でも、企業が伝えたい価値観を堅苦しくない形で示す方法として参考になる部分があります。
で、自社は何をすればよいのか
資料の「型」を用意する
まず取り組みやすいのは、社内で使う資料のテンプレートを整えることです。表紙、見出し、本文、グラフの見せ方といった基本の型を決めておけば、作る人がゼロから悩む必要が減り、資料の見た目のばらつきも小さくなります。装飾で悩む時間を、伝える内容そのものを考える時間に振り向けられます。
色や文字の大きさに簡単な決まりを設けるのも有効です。細かすぎるルールは守られにくいので、使う色は数色まで、本文の文字はこの大きさ以上、といった数個の目安から始めるとよいでしょう。
「伝わったか」で評価する
資料の良し悪しを、見た目のきれいさだけで判断しないことも大切です。会議のあとに「結局この資料は何を決めてほしかったのか」が参加者全員に伝わっていたかを短く振り返るだけでも、次回の作り方は変わります。装飾が控えめでも意図が明快な資料は、実務では十分に機能します。
研修を検討する場合も、正解を教える形式だけに頼らない方法があります。今回の大会のように、あえて分かりにくい資料を作ってみて、その理由を言葉にしてもらう。こうした進め方は、参加者が受け身になりにくく、記憶にも残りやすい面があります。
社内の空気づくりにも使える
もう一つの学びは、社内施策の見せ方です。同じ内容でも、堅い呼びかけではなく、参加したくなる仕掛けを添えるだけで反応が変わることがあります。応募フォームまで企画の世界観に合わせるという細かな作り込みは、参加者に「本気でふざけている」と伝わる工夫といえます。社内のイベントや情報発信でも、こうした一貫性は意外に効きます。
もちろん、業種や社内の文化によって、ユーモアをどこまで取り入れられるかは異なります。取引先に提出する資料と社内向けの資料では求められる水準も違うため、線引きを決めておくと運用しやすくなるでしょう。
まとめ
今回の企画は、学生向けカンファレンスに伴う遊び心のある取り組みですが、その背景には「伝える力を育てたい」という明確な狙いがあります。資料づくりは多くの企業で日常的に発生する作業であり、少しの型づくりと振り返りで質が変わりやすい領域です。笑えるニュースとして眺めるだけでなく、自社の資料や社内施策の見せ方を点検する機会として受け取ってみてはいかがでしょうか。詳細は出典記事(https://www.itmedia.co.jp/news/article/2608/28/2000000902/ )をご確認ください。