「月給28万円(固定残業代含む)」、この一行だけでは載せられません

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求人票を出そうとして、ハローワークや求人媒体から「この表現は掲載できません」と差し戻された経験はないでしょうか。多くは悪意ではなく、社内で長く使ってきた言い回しをそのまま載せてしまったことが原因です。ただ、指摘される表現の背後にはきちんとした法令の根拠があり、知らないまま使い続けると求職者との認識のずれや、入社後のトラブルにつながることもあります。今回は、求人票で避けたい表現とその根拠、そして具体的な書き換え例を紹介します。

年齢の制限は原則として書けません

年齢制限の記載で差し戻される求人票
年齢制限の記載で差し戻される求人票

根拠は労働施策総合推進法

募集・採用における年齢制限は、労働施策総合推進法(正式には「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」。かつての雇用対策法が改称されたもの)第9条により、原則として禁止されています。事業主は労働者の募集及び採用について、年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない、という定めです。

つまり「35歳まで」「40歳以下歓迎」といった表記は、原則として求人票に載せられません。求人媒体やハローワークが掲載を止めるのは、媒体側の独自ルールというより、この法律に沿った運用をしているためです。

例外は限定的です

ただし、同法の施行規則第1条の3第1項に例外事由が定められており、すべての年齢表記が一律に不可というわけではありません。代表的なものを挙げます。

例外の種類内容の例
定年年齢を上限とする場合期間の定めのない労働契約で、定年60歳の会社が「60歳未満」とする
長期勤続によるキャリア形成期間の定めのない契約で、職務経験を不問とし、新卒者と同等の育成を行う前提で若年層に限定する
技能・経験の継承特定の職種で著しく特定年齢層が少なく、その層に限定して募集する
法令上の年齢制限労働基準法などで年少者の就業が制限されている業務

注意したいのは、二番目の「長期勤続によるキャリア形成」です。これを理由に若年層に限定するなら、職務経験を問わないこと、期間の定めのない労働契約であること、育成の体制があることといった条件をそろえる必要があります。「経験3年以上、かつ35歳まで」という書き方は、経験を問うている時点でこの例外に当てはまりません。

例外を使うときの表記

例外に該当して年齢を書く場合でも、その理由を求人票に明示することが求められます。理由を書かずに年齢だけ記載すると、指摘の対象になりやすくなります。自社の募集がどの例外に当たるのか、事前に整理しておくと安心です。

性別を思わせる表現も見直します

男女雇用機会均等法が定めるもの

男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)第5条は、募集・採用について性別にかかわりなく均等な機会を与えることを事業主に義務づけています。「営業マン募集」「女性歓迎」といった表記は、この趣旨に沿わない可能性があります。

職種名そのものが性別を示している場合も同様です。ウェイター・ウェイトレス、看護婦、営業マンといった呼び方は、性別を限定しない名称に置き換えるのが一般的です。

間接差別にも注意します

さらに気をつけたいのが、同法第7条が定める間接差別です。これは、性別以外の要件でありながら、実質的に一方の性に不利に働く条件を指します。募集・採用で問題になりやすいのは、合理的な理由なく身長・体重・体力を要件にすること、そして転居を伴う転勤に応じられることを要件にすることです。

業務上どうしても必要なら要件として設定できますが、「なんとなく昔からそう書いていた」という理由で残っているなら、この機会に必要性を検討してみてください。

表現の言い換え例

  • 営業マン募集 → 営業職募集
  • 主婦歓迎 → 家庭と両立しながら働きたい方歓迎
  • 体力に自信のある男性 → 20kg程度の荷物を運ぶ作業があります

最後の例のように、「誰を求めるか」ではなく「どんな仕事か」を書くと、性別や年齢に触れずに実態が伝わります。求職者にとっても判断材料が増えるため、応募後のミスマッチが減りやすくなります。

給与表示の誤解を招く書き方

固定残業代は3点セットで書きます

給与欄で最もトラブルになりやすいのが、固定残業代(みなし残業代。一定時間分の時間外労働手当をあらかじめ含めて支払う制度)の表示です。「月給28万円」とだけ書き、実は45時間分の固定残業代が含まれていた、という求人票は、入社後の不信感につながります。

厚生労働省の指針では、固定残業代を採用している場合、次の3点を明示することが求められています。

  1. 固定残業代を除いた基本給の額
  2. 固定残業代に関する手当の名称、金額、それが何時間分の時間外労働に相当するか
  3. 固定残業時間を超える時間外労働分は追加で支給する旨

書き換えの例を挙げます。「月給28万円(固定残業代含む)」ではなく、「月給28万円(基本給22万5,000円+固定残業手当5万5,000円/時間外労働30時間分。30時間を超える分は別途支給)」とします。文字数は増えますが、この一文があるかどうかで求人票の印象は大きく変わります。

「モデル年収」の扱い

「年収600万円可能」といった表記も、根拠が曖昧なまま載せると誇大な印象になります。歩合や賞与で幅が出る職種なら、実績のある社員の内訳を示す、あるいは「入社1年目の平均支給額」のように条件を添えると、読み手が自分の場合を想像しやすくなります。

なお、職業安定法第5条の3および同法施行規則により、募集時に明示すべき労働条件が定められています。2024年4月からは、就業場所・業務の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の上限の有無なども明示事項に加わりました。給与だけでなく、この明示事項が漏れていないかもあわせて確認しておきたいところです。

書き換えは「実態を書く」に尽きます

属性の要望を仕事の実態に書き換える
属性の要望を仕事の実態に書き換える

避けたい表現を並べると、書けることが減ってしまうように感じるかもしれません。けれども実際には、属性で絞る表現を外した分だけ、仕事の中身を書くスペースが生まれます。

書き換えの考え方

  • 「若い人が欲しい」→ 未経験から育てる体制があることを書く
  • 「体力のある人」→ 実際の作業内容と重量・頻度を書く
  • 「長く働ける人」→ 平均勤続年数や定着の取り組みを書く

属性への希望は、たいてい何らかの実務上の理由から生まれています。その理由のほうを言語化すれば、法令に触れず、しかも求職者に伝わる文章になります。「なぜその人が欲しいのか」を社内で一度掘り下げてみると、求人票の言葉は自然と具体的になっていきます。

おわりに

年齢制限は労働施策総合推進法第9条、性別に関する表現は男女雇用機会均等法第5条・第7条、給与や労働条件の明示は職業安定法が根拠になります。いずれも例外や運用の細部があり、自社の募集がどれに当たるかは個別の判断が必要です。

まずは今出している求人票を一枚印刷して、年齢・性別・給与の3か所に線を引いてみてください。そこに実態と違う表現や、根拠を説明できない条件が残っていないかを確かめるところから始められます。判断に迷う場合は、管轄のハローワークや社会保険労務士に相談すると、自社の状況に応じた助言が得られます。