
はじめに ─ 電話番号の優先順位を誤っていた創業初期
起業当初、私は「まだ従業員もいないし、問い合わせもほとんどないだろう」と考え、 会社用スマートフォンさえあれば十分だと思っていました。
固定電話番号の取得は後回しにしても問題ないと判断していたのです。
しかし、その考えは大きな間違いでした。
実際に事業を進める中で、固定電話番号の有無が信頼性や取引条件に影響することを痛感しました。
会社に固定電話が必要な理由
固定電話は「使うかどうか」ではなく、「持っているかどうか」が問われます。
金融機関との融資審査や取引先の信用調査においても、固定電話があるか否かは信頼度を左右する要素です。
また、従業員を雇用した際には、各種申請書や手続き書類に勤務先の電話番号を記載する場面が多くあります。
その際に「自社に固定電話がない」となると、従業員自身が会社に対して不安や違和感を抱く可能性もあります。
取引で直接使うかどうかに関係なく、固定電話は企業としての“顔”の一つ。
それを持たないという選択肢は、結果的に信頼の欠如につながりかねません。
固定電話番号の取得条件と注意点
固定電話番号を取得するためには、基本的にその番号の市外局番に対応する住所で事務所を構えている必要があります。
つまり、東京の番号を取得したければ、東京都内に住所を置かなければなりません。
私自身、起業時は資本金も限られており、コストを抑えるためにバーチャルオフィスを利用していました。
ところが、バーチャルオフィスでは「契約者の居住地」に紐づいた市外局番しか取得できず、 会社所在地とは異なる地域の番号しか持てないという落とし穴がありました。
例えば、本社を東京都に登記しても、代表者の住所が埼玉県なら、埼玉県の番号しか取得できない。
これでは所在地と電話番号の整合性が取れず、法人としての印象を損ねる場合があります。
これから会社を設立する方は、「どの地域の番号を使いたいか」を事前に明確にし、 オフィス契約時にその条件を満たしているかを必ず確認しておきましょう。
AI自動応答システムという選択肢
現在、私が採用しているのは、AIによる自動応答システムです。
いわゆる「人の代わりにAIが電話対応を行う仕組み」で、発信者との会話を自動で録音し、 内容をメールで通知してくれるというものです。
このシステムを導入することで、直接電話を取る必要がなくなり、業務に集中できるようになりました。
さらに、録音内容を後から確認できるため、伝達ミスや対応漏れも防止できます。
AI電話のメリットとデメリット
まずデメリットとして挙げられるのは次の2点です。
- 電子音声による応答のため、初めて電話をかける相手に違和感を与える可能性がある。
- 取得できる番号が「050」から始まるため、固定電話としての信頼感がやや劣る。
ただし、実際に利用してみるとこれらの懸念はほとんど問題になりませんでした。
相手に誠実に対応し、必要に応じて折り返す体制を整えれば、信用を損なうことはありません。
一方でメリットは非常に多く、特に次のような点で優れています。
- 通話内容を自動録音し、音声付きでメール通知してくれるため、情報漏れがない。
- 電話対応の人員を確保する必要がなくなり、業務効率が大幅に向上。
- 応答メッセージをカスタマイズでき、自社らしい対応スタイルを設定可能。
- 初期費用・月額費用ともに安価で、導入コストを抑えられる。
起業初期における最適な選択を
起業時の状況によって、どのように電話番号を準備するかは大きく異なります。
重要なのは「会社の信頼性をどう構築するか」という視点を持つことです。
固定電話を用意できる環境であれば早めに導入し、 難しい場合でもAI自動応答などの代替手段を検討することで、信頼性を確保することが可能です。
電話番号は単なる“連絡先”ではなく、企業の信用を象徴する大切な要素です。
コストや利便性だけでなく、今後の拡大や融資審査なども視野に入れた上で、 最も適した方法を選択するようにしましょう。
まとめ ─ 固定電話は信頼の第一歩
会社の固定電話番号は、事業を円滑に進めるための「信頼の証」です。
顧客・金融機関・従業員、どの立場から見ても、連絡先の整備は安心感を与えます。
AI電話など新しい技術を活用しながらも、形式的な信用を軽視しないこと。
起業家としての第一歩は、こうした小さな備えから始まるのだと実感しています。